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人生100年時代の「めぐる人材活用」
~Waris創業代表・田中美和インタビュー(前編)

2020年1月23日

2013年の創業以来、総合職フリーランス女性や、女性の再就職支援を手がけてきた株式会社Waris。実はWarisの事業こそが「サーキュラーHR」だという稲葉編集長が、Waris創業代表の一人である田中美和にインタビューしました。

人材の循環が社会を活性化させる

稲葉編集長:僕は、Warisの事業は「サーキュラーHR」そのものだと思っているんです。

あらためて「サーキュラーエコノミー」とHRの関係性を確認しておくと、「サーキュラー」とは、大量消費資本主義の対極にある概念。循環させる経済をつくりましょうという考え方がサーキュラーエコノミーです。この価値観の下で、人材は大切な資源であり、経験値が上がると価値が上がっていくと考えるんですね。

※「サーキュラーエコノミー」と「サーキュラーエコノミーHR」の関係性

田中:そうですね。創業当初はシンプルに「女性たちが生き生きと働けることに貢献したい」と思っていたのですが、やっているうちに、人が循環することによって日本の社会が活性化するとか、潜在能力が発揮できるという気づきがありました。

Warisは女性3人で創業した会社なのですが、3人ともそれぞれの立場で「女性ってなんかモヤモヤとか、葛藤とか、ジレンマを抱えながら仕事しているよね」と感じていて、女性たちが生き生き働き続けることができたらいいよねと話していました。そのためにどういう方法があるのかなって考えて、「働き方」を変えることで変化を起こせるんじゃないかと思ったんですよね。働くことと生きることって近いですし、人生の中で、働く時間はかなりの割合を占めていますから。

働き方が硬直化・固定化していることにより、女性が働きにくいな、自分らしくいられないなと感じている。そこで、ライフステージが変化しても女性たちが生き生きと働き続けるために、時間と場所の自由度が高い働き方をすることが生き方の選択肢を広げるんじゃないかと思って、フリーランスに着目しました。


ところが事業をやっていくと、フリーランスから社員に戻りたいという方もいるんですね。例えば管理職として組織のマネジメントを経験したいとなると、フリーランスと会社員では経験できることが違いますから。働き方って二項対立ではなく、ライフステージによって変わっていくものなんだなということが分かりました。働き方や、人材も循環していくんですね。

今は副業・兼業も進んでいるので、フリーランスから正社員に戻ったけれど、フリーランス時代の仕事を副業として続ける方もいます。社員やフリーランスといった働き方がグラデーション化していくし、人材が社会の中を「めぐって」いく。個人にとってもハッピーだし、社会にとってもすごく健康的で、いいことだなと思いました。

私たちWarisも、人材の流動化が社会の活性化につながるんじゃないかという課題感を持って事業をやってきました。実際、社会がその方向に動いてきているので、私たちとしても、マッチングという手段を通じて雇用の流動化に貢献できているという自負が生まれてきました。

チャンスがあれば能力発揮できる人がたくさんいる

稲葉:離職女性の再就職を支援する「ワークアゲイン」も、雇用の流動化に貢献する事業ですよね。

田中:フリーランスのマッチングって、どうしても即戦力中心になるんですね。ご登録者様が増えてくると、5年、10年のブランクがある方も登録してくださって。ところが企業からすると、フリーランスって人材育成の対象ではないですし、すぐに能力発揮していただくのが第一条件です。なかなかマッチングが難しいというジレンマがありました。

そこで、「フリーランス」ではなく「ワークアゲイン」「もう一度働く」というコンセプトのもと、離職女性をインターンという形で企業様とお引き合わせするプロジェクトを、弊社の小崎が中心となってスタートしました。それがすごくうまくいったんですね。

最初からフリーランスとしてはマッチングできなくても、例えばまずインターンシップを受けていただく。いきなり就職活動が難しければ、まずはWarisが主催する座学の講座に来ていただいて、その後に企業との出会いの場を設ける。そういった方法で、講座を受講された方の約7割が、実際の雇用につながっているんです。チャンスさえあれば能力発揮できる方がたくさんいるんだなという気づきがありました。

日本女性の平均寿命って、今87歳くらいなんですよね。医療技術も日進月歩ですし、「人生100年時代」は決して夢物語ではなく、リアルな話なんです。会社の平均寿命が25年程度といわれる中、圧倒的に個人の寿命の方が長いことを思うと、1社でずっと働き続ける時代ではないですよね。

人生のフェーズごとにフリーランスになったり、正社員に戻ったり。もちろん、一定期間仕事をしないということもあり得ます。高齢になって、企業の再雇用を期待できない方はフリーランスになっていくしかないですし。そう考えると、どなたでもフリーランスになる可能性があります。そんな中で、多様な生き方、働き方に向き合う人を応援したいという想いで事業を続けてきました。

常に自分自身のスキルをアップデートしていく

稲葉:そんな時代に、個人はどんな意識で働いていけばいいと思いますか。

田中:以前、慶應義塾大学の高橋俊介先生が「スキルってせいぜい4~5年したら陳腐化しちゃうよね」と仰っていたのが印象的でした。テクノロジーも進化していますし、社会の変化するスピードも加速しています。10年前に身につけたスキルだけで働いていくのは難しくて、常に自身のスキルをアップデートしていく意識が必要だと思うんですよね。

フリーランスについての議論をしていると、「フリーランスのキャリア形成って未知の世界だよね」という話がよく出ます。これまでは、会社員の方であれば、会社の研修や異動などを通じてキャリア形成を図るのが一般的でした。でも、フリーランスになるとそれを全部自分でやらなければいけない。

常に「今、自分に足りないものは何だろう」と考えて、例えば自分のキャパシティの中で10%くらいは学びや新しいことへの挑戦に使う、というように、キャリアデザインも含めて自分でやっていかないと「質」を担保できない。そういう意味で、すごくチャレンジングな時代だと思っています。

私たちは「Live Your Life」というミッションを掲げていて、自分らしいキャリア形成をすごく大切にしています。じゃあ「自分らしい人生」ってどうしたら実現できるんだろうと考えたときに、自律的にスキルのアップデートなどの努力をしていく必要があると思っています。
後編に続く

<サーキュラーHRへのヒント>

  • 「社員」「フリーランス」といった働き方の境界線があいまいになり、グラデーション化して、人材が社会の中を「めぐって」いく時代になる。
  • 結婚や出産などを理由に離職した女性の中にも、チャンスがあれば能力発揮できる人材がたくさん眠っている。
  • スキルは4~5年で陳腐化する。常に自身のスキルをアップデートしていく意識が必要。

【プロフィール】

株式会社Waris代表取締役/共同創業者 田中美和
国家資格キャリアコンサルタント。1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接した働く女性の声はのべ3万人以上。女性が自分らしく前向きに働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年株式会社Waris設立。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』がある。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事。講談社ミモレにて『100年時代のキャリアデザイン』連載中。

サーキュラーHR~「人材ロス」ゼロ社会を目指して~

https://circularhr.waris.jp/

Warisプロフェッショナル~ビジネス系・女性フリーランス × 企業のマッチングサービス~ https://waris.co.jp/service/waris-professional

Warisワークアゲイン~女性のための再就職支援サービス~

https://waris.co.jp/service/waris-work-again

Warisキャリアエール~フリーランス女性のためのキャリア伴走サービス~ https://careeryell.waris.jp/