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働く人におせっかいを焼き、望まない離職を減らす
~OKAN代表取締役CEO・沢木恵太さんインタビュー

2020年3月27日

オフィスにいながら、1品100円で、健康的な美味しい食事がとれると話題の福利厚生サービスオフィスおかん。このサービスを提供している株式会社OKANは「働く人のライフスタイルを豊かにする。」ことをミッションに掲げています。働きたい人が生き生きと、生産性高く働き続けるために企業は何ができるのか、OKAN代表取締役CEOの沢木恵太さんにお話をうかがいました。

望まない離職を減らすため、働く人におせっかいを焼く

編集部(以下、――) OKANのミッションの中で「働く人におせっかいを焼く」という言葉が印象的です。あらためて、会社創業の背景から聞かせていただけますか。

沢木恵太さん(以下、敬称略):これからの時代は、企業が従業員にどういう「おせっかい」をしていくか、考えることが必要になると思っています。日本の人口は減少し、高齢化が進んで、人手不足が深刻化しています。企業の魅力を高め、今いる人材に働き続けてもらう「リテンションマネジメント」の重要性が高まっているんです。

個人が「会社を辞めたい」と思うとき、大きく分けて2つの要因があります。ひとつは「モチベーター」。仕事のやりがいや、理念への共感です。もうひとつが「ハイジーンファクター」。育児や介護との両立や、健康、人間関係などですね。日本ではモチベーターが注目されることが多いのですが、実はハイジーンファクターこそ、適切な投資が必要な分野なのです。個人は働き続けたい、企業も辞めないでほしいと思っているのに、誰も望まない離職が起こってしまうんですね。

組織カルチャーとして、「ダイバーシティ」や「健康経営」というキーワードに意識を向ける企業も増えてきましたが、ハイジーンファクターを解消することが、経営上合理的であるという視点を持っている経営者や人事担当者は、まだ多くないと思います。このような社会課題を解決したいという問題意識から、OKANの起業に至りました。

オフィスおかんは、望まない離職を減らしたい、ダイバーシティや健康の課題を解決したいと考えている企業の、行動を支援するためのツールです。専用冷蔵庫の設置や在庫管理など、すべて私たちが行う(一部エリアに限る)ので導入のハードルが低いこと、誰もが利用できる「食」という対象の広さから多くの企業に共感していただき、現在約2000社がオフィスおかんを導入しています。
 

意識を変え、行動を起こすための仕組みづくり

――オフィスおかんのお惣菜を食べたことがありますが、とても美味しくて驚きました。ちょっと小腹がすいたときに、スナック菓子ではなく栄養バランスのとれた美味しい食事を手軽にとれるのは、従業員にとっても、会社が自分たちの健康を気づかってくれていると意識しやすいですね。

沢木:健康経営や働き方改革の一環として導入していただいている企業も多いのですが、オフィスおかんを導入したことでフリースペースの稼働率が上がり、コミュニケーションが活性化したという声もあります。育児中の社員が総菜を持ち帰って夕食にするなど、育児支援の目的で活用している企業もあるようです。オフィスおかんはメリットが分かりやすく、利用のイメージがつきやすいので、「従業員のために何かしてあげたい」という企業の、最初の一歩として取り入れていただいているようです。

――2019年7月からはハイジという新たなサービスもスタートしたそうですね。

沢木:オフィスおかんは企業の「行動を支援」するためのサービスですが、ハイジは望まない離職のトリガーとなる要因を調査し、「意識の変容」を促すためのツールです。無料で導入することができ、従業員に簡単なアンケートに答えてもらうことで、労働時間や社内の雰囲気など、12項目のハイジーンファクターを分析することができます。

「なぜか次々と従業員が辞める」「このままではまずい気がするが、何を変えればいいのか分からない」という経営者や人事担当者は少なくありません。ハイジを活用することで、何が離職の要因になっているのか、会社として何に投資するべきなのかを可視化することができます。

調査結果を見てみると「やっぱりそこが原因だったのか」と思い当たることも多いようですが、ここで重要なのは、改善するべき点が、定量的に可視化されることなんですね。目に見える数値として現状を把握することで、例えば社内での説明もしやすいでしょうし、意思決定のスピードも上がると考えています。

ゆくゆくは、調査結果に対して「こんな解決方法があります」と具体的な行動をご提案できるような仕組みを整えていきたいですね。

情報も、働く場所もオープンにするのがOKAN流

――私たちは「サーキュラーHR」という考え方を通じて、誰一人取り残さない社会を実現したいと考えています。沢木さんはリテンションマネジメントの重要性に着目して事業を展開しておられますが、サーキュラーHRのモデルについてどんな印象を持ちましたか?

沢木:人材という限りある資源が消費されてはならないというサーキュラーHRの課題感には、私たちがリテンションマネジメントに投資して、望まない離職を減らさなければならないと考える理由と通じるものがあり、共感しています。リテンション=人材の流動性をなくすこと、ではないんですよね。企業の魅力を高めることと、個人がほかの企業に移っても活かせるようなスキルを身につけることは両立できるのではないでしょうか。例えば企業が、自分の会社でしか通用しないような形で、個人のスキルを限定してしまうようなやり方はよくないと思います。

――沢木さんご自身は経営者として、OKANの人材活用や組織づくりについてどんなことを意識していますか。

沢木:OKANはスタートアップフェーズにある会社です。スピーディに事業に投資し、チャレンジしていく必要がある段階だと思っています。成果を出すためには、ダイバーシティを実現し、多様なバックグラウンドを持った人たちが働きやすい環境をつくることが重要です。 「働きやすさ」そのものが目的ではなく、働きやすさはあくまでも手段だと考えています。

「女性活躍」とよく言われますが、OKANでは、そもそも性別をあまり意識していません。メンバーの6~7割はもともと女性ですし、育児中のメンバーも非常に多いです。マネージャーの女性比率も高くなっています。「女性だから」「育児中だから」と意思決定ができないことをなくすため、場所の制約に縛られずフレキシブルに働けるよう、テレワークをはじめさまざまな制度を整えています。

――新型コロナウイルスの流行を受けて、テレワークを導入する企業も増えていますね。

沢木:制度としてテレワークがあっても、実際にはオフィスに来ないと業務に必要な情報が得られない状況では、活用は難しいです。そういった事態を防ぐため、OKANでは情報をオープンにすることを心がけています。

――こちらの新オフィスも、とてもオープンな雰囲気です。オフィスOKANが食べられる「“DAIDOKORO 台所”」、窓辺で仕事ができる「“ENGAWA 縁側”」など、働きやすく生産性が上がる工夫が満載だと感じました。

沢木:会社の風土として、「オープンであること」は意識しています。現在のオフィスには2019年5月に移転してきましたが、極力壁をなくし、開放感にこだわってデザインしました。プライバシー保護の観点から、1on1だけは仕切りのあるスペースで行いますが、基本的には、誰がどんなコミュニケーションをとっているか一目で分かります。もちろん、議事録もしっかりと残します。

企業と多様な個人がフラットな関係を築く「働き方3.0」

――望まない離職を減らし、多様な人材を活かすため、企業の経営者や人事担当者は、どんな意識を持つといいのでしょうか。

沢木:昭和の「働き方1.0」は、終身雇用制度の下、猛烈に働くというものでした。この働き方により、日本は高度成長を遂げたといえます。平成の「働き方2.0」は、ワーク・ライフ・バランスを大切にするという考え方。ただ、これは「働く時間は削減した方がいい」という価値観に基づいているため一律的な対応になり、個人の意思が尊重されにくいという欠点がありました。一方、私たちが考える「働き方3.0」では、個人の「ワーク・ライフ・バリュー」が重要になります。ワークとライフを一定の割合で分配するのではなく、一人ひとりの価値観によって大切にしたい物事の比重が異なることを、企業としても理解することが必要です。

ダイバーシティ、個人の多様化は、もはや止められない流れです。企業の側が、個人に合わせざるを得ない状況になっています。と言っても、企業が「下」になるということではなく、働く人と企業はあくまでフラットであるべきだと考えています。対等な立場で対話をしながら互いに理解を深める。その際、業務のマネジメントやスキルの把握だけでなく、相手の価値観を知ることが大切です。そのために、例えばハイジのようなツールを活用することも、ひとつの方法だと思います。

――人材の流動性が高まる時代、働く個人は、どのような視点で自分のキャリアを考えるといいのでしょう。

沢木:今、企業は「私たちはこんなことを大切にしています」と価値観の可視化を進めようとしています。個人も、自分にとって仕事をする上で何が重要なのか、どんなことが会社を辞める理由になるのかを考えてみることで、自分にフィットする企業を見つけやすくなるのではないでしょうか。

――最後に、OKANとして今後実現したい社会のビジョンを教えていただけますか。

沢木:はい。私たちは「働く人のライフスタイルを豊かにする。」というミッションを掲げ、その手段として、オフィスOKANやハイジなどの事業を展開しています。

私たちの事業は、例えば10年単位の長い時間軸で取り組むと、手遅れになってしまうと考えています。5年以内にどれだけ結果を出せるか、スピード感が非常に大切です。おそらく10年後には、人材領域における課題が大きく変化しているでしょう。指針となるものを持ちながら常にアップデートを繰り返し、これからも、社会課題の解決に取り組んでいきたいです。

<サーキュラーHRへのヒント>

  • 労働力人口が減り続ける中、企業の魅力を高め、今いる人材に働き続けてもらう「リテンションマネジメント」の重要性が高まっている。
  • 事業で成果を上げるためには、ダイバーシティを実現し、多様なバックグラウンドを持った人たちが働きやすい環境をつくることが必要。
  • 個人の多様化が進む中、一人ひとり大切にしたい物事の比重が異なることを、企業としても理解することが大切になる。
  • 人事領域における課題は、短い周期で刻々と変化していく。

【プロフィール】

株式会社OKAN代表取締役CEO 沢木恵太

1985年長野県茅野市生まれ、中央大学商学部卒。フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業にて新規事業開発、ベンチャー企業でゲームプロデューサー兼事業責任者を経て、EdTech領域のスタートアップに初期メンバーとして参画。その後、2012年12月に株式会社OKANを設立。「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」をミッションに、2014年3月には、ぷち社食サービス「オフィスおかん」をリリース。2020 年2⽉、⼈材定着のための組織改善サービス「ハイジ」の無料提供を開始した。

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