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素材・化学業界で女性が活躍できる土壌を提供する
~UMI代表取締役パートナー・木場祥介さんインタビュー

2021年12月14日

女性活躍推進がなかなか進まない日本。特に、日本の基幹産業のひとつである素材・化学業界で働く女性は、まだまだ少ないという現状があります。

そんな中、性別や年齢、これまでの経験・スキルにかかわらず意欲のある人が活躍出来る場をと、多様な働き方を取り入れ、女性やシニアの登用を積極的に進めている会社があります。

ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社(UMI)。日本で唯一、素材・化学産業に特化した投資活動を行っているベンチャーキャピタル(VC)です。UMI代表取締役パートナーの木場祥介さんに、女性の登用を進めている背景や、メリットについてお話をうかがいました。

 

ダイバーシティを推進する素材・化学業界のVC

ーーはじめに、UMIがどんな会社なのか教えていただけますか。

木場祥介さん(以下、敬称略):UMIは素材や化学など、ものづくり産業に特化したVCです。官民ファンドであった産業革新機構(現株式会社INCJ)からスピンアウトする形で、2015年に設立しました。

素材・化学産業は、日本のGDPの3〜4割を占める巨大な産業ですが、産業構造上イノベーションのスピードが遅いため、なかなか新しいビジネスが生まれにくい状況があります。そこで私たちは、大学や研究機関、ベンチャー企業など有望なシーズに投資を行いながら、大企業とも連携していくことで、新事業創出のプラットフォームとしての役割を果たすことを目指しています。

 

<UMI公式サイトより> コンセプト説明動画はこちら

 

そのような背景で生まれた会社のため、VCという業態ですが、伝統的な金融業の会社とは社風もかなり違っており、さまざまなバックグラウンドを持つ多様なメンバーが活躍しています。働き方も時短勤務、フリーランス、リモートワークなどさまざまです。

ーー人材の多様性を大切にしているのですね。私たちもサーキュラーHRというプロジェクトを通じ、人材という「資源」を使い捨てにしない社会の実現を実現したいと考えています。

木場:まったく同感ですね。UMIでは、当初からシニア人材の可能性に注目し、登用に力を入れてきました。定年退職後、「私は1社しか経験していないから、ほかの会社で認められるはずがない」と自信をなくしているシニアの方は多いです。でも、実は百戦錬磨のさまざまな経験を持っているので、フィットする環境があれば十分に活躍できることを、これまでの経験をもって実感しています。

女性にももっと活躍してもらいたいと考えるようになったのも、同様の理由からです。私は理系の大学院を卒業しているのですが、学生200人のうち女性は20人ほど、およそ1割という少なさでした。数少ない女性たちも、就職して、出産やパートナーの転勤で一度職場を離れると、復帰できなくなる事例がとても多いのです。この偏った状況に風穴を開けたいと考えて、プロフェッショナルな個人と企業をマッチングする株式会社Warisに相談し、採用イベントを共催することになりました。今、当社のメンバーのおよそ4割は女性ですが、今後割合をさらに増やしたいと考えています。

人材の流動性を高めると、雇用が安定する

木場:UMIに入社する方には「うちの会社を『学校』だと思ってください」と話しています。当社で身につけたスキルや経験を生かして起業する方も多く、起業や次の仕事へのステップとしてさまざまなことが提供できる場でありたいと考えています。したがって、その人が会社を辞めて、次のステージへ進んでからが本当のお付き合いだと思っています。『ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』(リード・ホフマン著、篠田真貴子監訳、ダイヤモンド社)で紹介されたような、シリコンバレーで実践されている新しい働き方のイメージです。

ベンチャー企業で仕事をしていると、うまくいくこともあれば、失敗することもあります。それは個人の能力だけでなく、会社との相性の問題もあるため、個人がさまざまな環境で経験を積みながら自分を高めていけるのが理想だと考えています。

ーー人材の流動性を高めていくという考え方は、ベンチャー企業にフィットしそうです。

木場流動性を高めることが、結果的に雇用の安定にもつながると信じています。素材・化学業界は、終身雇用制度が根強く残っている企業も多く、人材の流動性が低い業界です。そのような状況では、イノベーションが起こりにくく、新しい事業も育ちにくいので、国際競争力が下がってしまいます。

例えばA社で新規事業がうまく育たなくても、隣のB社では同じ事業が軌道に乗っているかもしれない。A社で新規事業に取り組んでいる人たちがチームごとB社に移れば、事業がさらに成長します。しかし日本の感覚だと、それは「身売り」と言われてしまうんですね。社員側の目線から見たとき、A社に残って給与が減り、場合によってはリストラされてしまうことと比べて、どちらが雇用が安定していると言えるでしょうか?

ーー専門性の高い人材を見ていると、本当におっしゃる通りだと思います。ひとつの会社に所属することなく、さまざまな企業から引き合いがあってどんどんステップアップしたり、結果的に自分が仕事を選べる立場になったりしていることも多いですね。

木場:特定の優秀な人にかぎらず、真面目に仕事をしてきた方であれば、経験した会社の数にかかわらず引き合いがあると思います。当社は採用時に、学歴やスキル、業界経験を持っているかどうかは、実は大きな判断基準ではありません。スキルはあくまでも手段であって、目的ではありませんから。

 

プロフェッショナルとは、最後までやり切る意志

ーー人材を採用するときには、どんなことを重視しているのですか。

木場:好奇心を持っているかどうかですね。ゼロから新しい事業を生み出すのが私たちの仕事です。やりがいがありますが、大変なことも多いです。壁にぶつかった際に、乗り越えるための原動力になるのは、「この先に何があるのかを見てみたい」という好奇心です。

好奇心があれば、事業を作り出すために学ばなければならないことが自然に見えてきます。UMIでは、新しく入社する方たちのために、40を超える学びのプログラムを用意しています。入社時に経験やスキルが足りなくても、「学びたい」気持ちがあれば、投資業務やファイナンスはもちろん、経営に必要な幅広い知識を身につけることができる仕組みを整えています。

ーー今、活躍しているメンバーの方も、そのようなプログラムを活用して成長されたのですね。

木場:何もないところに放り込まれると、「どうしよう」「何をすればいいんだろう」と不安になりますよね。もちろん、質問をしてもらえれば、必要なことはその都度必ず教えます。プログラムを見たり、文献を読んだりして学びつつ、業務で実践することで、プロフェッショナルとして成長していくメンバーをこれまでたくさん見てきました。一度始めたことは中途半端に投げ出さず、必ず最後まで取り組んでもらうのがUMIのやり方です。多くの方が入社から半年、1年後には何らかの実績を出せるところまで成長しています。

 

 

ーーかなり早いペースで成長できる環境があるのですね。

木場:Warisからの紹介でUMIへジョインしたCさんという女性は、新規事業を立ち上げ、投資案件として成立するところまで、異業種から入社して半年でやり遂げました。通常1〜2年かかるところ、非常にスピード感がありましたね。現在、彼女はその経験を生かしてご自身の事業を立ち上げ、経営者として事業を推進されています。

ーーCさんが成功したポイントは、どんなところにあったのでしょう。

木場:本人が「プロとして結果を出さなければならない」という意識を常に持っていたことは大きいと思います。ひとりで抱え込まず、わからないことはどんどん質問して、周りを巻き込んでいく姿も印象的でした。

プロフェッショナルというと、スキルセットを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。でも、私たちは「やり切ること」「結果を出すこと」こそがプロフェッショナルだと考えています。最初からスキルや経験を持っている人はいません。それよりも、最後までやり遂げる意志を持って取り組めるかどうかが重要です。新しいことに挑戦したい、ステップアップしたい、学びたいという気持ちはあるものの、自分には特別な専門性がないと感じている方にも、ぜひ採用イベントを通じてUMIと出会っていただきたいです。

ーー社内では既に高度なダイバーシティを実現しているUMIですが、これからどんな社会を実現していきたいのか、未来へ向けたビジョンをお聞かせください。

木場:世界に目を向けると、例えばアラブ首長国連邦は中東のイスラム圏ですが、女性リーダーの活躍が多く見られます。アジアの国々でも仕事をする上で、男性と女性の割合に大きな差はなくなりつつあります。そもそも「女性の社会進出」と言っている時点で、日本は遅れています。まずはベンチャーから、「仕事に性別は関係ない」という価値観を浸透させて、社会を変革していきたいですね。その結果、イノベーションが加速し、日本の素材・化学産業全体の成長につながることを願っています。

ーー今日は貴重なお話、ありがとうございました。

 

 

<サーキュラーHRへのヒント>

  • 素材・化学業界に特化したVC、UMIでは、設立当初からダイバーシティに注力し、シニア人材や女性の登用に取り組んでいる。
  • 人材の流動性を高めることで、イノベーションが加速され、結果的に雇用の安定性につながる可能性がある。
  • ゼロから新しい事業を生み出すとき、壁を乗り越える原動力になるのはスキルや経験よりも、「この先に何があるのかを見てみたい」という好奇心と、最後までやり切るという意志である。

 

 

【プロフィール】

ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社/代表取締役パートナー 

木場祥介

豊田通商株式会社に入社後、トヨタ自動車株式会社出向を経て、機能性材料分野における新規事業の立ち上げと、素材系ベンチャー企業への投資、グローバル展開支援に従事。2012年に株式会社産業革新機構(現・株式会社INCJ)に入社後、素材・化学チームを立ち上げ、UMIを企画の後、2016年4月よりUMIに正式参画。早稲田大学大学院理工学研究科、東京農工大学大学院生物システム応用科学府修了。博士(工学)。

 

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