2022年5月に発表された第2版「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(人材版伊藤レポート2.0)」。皆さんは、もうお読みになられましたか?
2020年に出された第1版からさらに踏み込み、具体的なアクションを示す内容となっています。
サーキュラーHRでは、皆さんと一緒に「人材版伊藤レポート2.0」を読んでみようというミニイベントを開催しました。イベントの模様を、ダイジェストでご紹介します。
「人材版伊藤レポート2.0」とは?
稲葉編集長:「人材版伊藤レポート」は、経済産業省から出されている、人的資本経営に関わるレポートです。2020年9月、第1版として「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書(人材版伊藤レポート)」が出され、今後の企業と政府の方向性が示されました。そして今年5月に第2版「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(人材版伊藤レポート2.0)」が発表されたのです。
第2版は、概念的なビジョンを示した第1版の単なるバージョンアップではなく、踏み込み方や位置づけなどがだいぶ異なり、企業への具体的な取り組みを促す側面も持っています。81ページもあるので、まだ第2版をじっくり読んでいない方も多いのではないでしょうか。
本日は、「人材版伊藤レポート2.0」を概観しつつ、サーキュラーHR独自の視点として、「伊藤レポートに書かれていないことは何か」を皆さんと一緒に考えていこうと思います。その結果、働き方の本質的な変革のために大切なことが見えてくるかもしれません。
静的な「1.0」から、より具体的なアクションに踏み込んだ「2.0」
稲葉:「人材版伊藤レポート1.0」と「2.0」には大きな違いがあります。「1.0」は現状がどうなっているのか、これからどういう姿を目指すのかという青写真を見せるもので、いわば「静的」なイメージです。
一方、「2.0」はより「動的」です。具体的にとるべきアクションや、そのため必要な心構え、予想される課題を示しています。変革を起こす上で、より大事なのは「2.0」かと思います。
中でも重要なポイントは、「動的な人材ポートフォリオの策定と運用」という項目に集約されています。そのために、「ダイバーシティ&インクルージョン」や「リスキル・学び直し」「社員エンゲージメントを高めるための取組」「働き方の多様化」が必要、と議論が展開されていきます。
「2.0」で繰り返し書かれているのは、「動的な経営戦略と人材戦略を連動させること」「常に学ぶ体制を作る」ことの重要性です。これらがさまざまな角度から強調されているのが印象的ですね。
「2.0」は、立場が弱い人への視点が欠落している
稲葉:では、「人材版伊藤レポート2.0」に書かれていないこととは何でしょうか。
サーキュラーHRの観点から見ると、弱い立場の人を取り残している、切り捨てている部分があると思います。契約形態やさまざまな制約によってフルタイムで働けない方など、自分自身では動的に動くことがままならない、立場が弱い方への視点が欠けているのではないでしょうか。
「2.0」には、社内で強い立場の人がいかに活躍していくかという「サクセションプラン(抜擢プラン)」のことも書かれています。一方で、弱い立場の人たちに、どうやって企業の中で活躍してもらうかについては書かれていません。
大切なのは、リスキリングできないなどの理由で取り残されていく人たちが、企業内で配置を変えるなどの施策によって、スキルを伸ばしていけるような仕組みづくりではないでしょうか。「2.0」の中に立場が弱い人たちに向けた視点がなく、全体的に強い人向けのレポートになっているのは、非常に気になるところです。
マネジメント側の自己開示や動的な人材戦略の事例
稲葉:「人材版伊藤レポート2.0」では、マネジメント方針の開示についても触れられています。関連して、これまでサーキュラーHRに掲載された記事から、印象的な言葉をご紹介しましょう。
・ヘラルボニー・松田崇弥さん、文登さん
「(当社で)一番大事にしていることが「自己開示」です。(中略)自分たちが率先して丸出しに自己開示するから、メンバーも安心して自己開示できると思います」
動的な人材戦略の事例については、以下の記事が参考になるでしょう。
・ハリズリー(土屋鞄)執行役員・三木芳夫さん
「新卒採用、キャリア採用の人材が入り、既存の人材がサンドイッチのように挟まれると、自然に人材が「押し出されて」、動きが出てきます」
セミナーにご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
サーキュラーHRでは、人的資本経営やSDGsに関連するさまざまなセミナーを開催しています。
次回のセミナーも、詳細が決まり次第お伝えしますので、楽しみにお待ちください。
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