PMSがつらいけれど、上司に相談できず、我慢しながら仕事をしている。
そんな悩みを抱えている女性は少なくありません。
一方、部下の生理や妊娠など、女性特有の問題についてどこまで踏み込んで話すべきか、悩んでいる管理職の方も多いようです。
そこでサーキュラーHRでは、「働く女性のヘルスケア」について考えるイベントを開催。
「体を使って働くプロ」である女子サッカーチーム・大和シルフィードの女性監督をはじめ、女性の体と心の問題に向き合ってきた多彩なゲストをお招きして、オンラインでトークセッションを行いました。
女性自身だけでなく、管理職の観点からもヒントになる意見が数多く出されたイベントの様子を、レポートでお伝えします。
管理職・指導者は女性のヘルスケアにどう向き合うべき?
当日は、まずサーキュラーHRを運営する株式会社Waris共同代表の河から、イベントの趣旨についてお話しました。
「Warisでは2013年から、女性のキャリア支援を行ってきました。人生100年と言われる時代、女性が長く仕事を続ける上で、女性のバイオリズムに合った働き方はとても大きなテーマです。けれど、女性の体についての話題はタブー視される傾向があり、オープンに話せない現状があります。
今回は、『体を使ってパフォーマンスを発揮するプロ』であるアスリートから学べることがあるのではないかと考え、このイベントを企画しました。今日のディスカッションを通じ、女性がハッピーなキャリア人生を歩むためのヒントが見つかるといいなと思っています」。
続くトークセッションでは、『管理職・指導者は女性のヘルスケアにどう向き合うべきか?』というテーマのもと、ディスカッションを行いました。
神奈川県大和市の女子サッカーチーム、大和シルフィードの藤巻藍子さんは、なでしこリーグで唯一の女性監督です。「女性指導者には、強みと弱みがある」と藤巻監督は語ります。女性であることの強みは、選手たちの体について理解してあげられること。一方、体の問題は個人差が非常に大きく、自分の経験が、必ずしも選手の経験に役立つとは限りません。「今、大和シルフィードには26人の選手がいます。26人それぞれの悩みや不安を把握することが必要だと感じています」。
サッカーは動きの激しいスポーツです。生理と試合が重なれば、試合中にモレが気になったり、PMSで選手のメンタルが落ち込むことも。「モチベーションを高めるための動画を皆で見たり、何でも話しやすい環境をつくることを心がける一方、馴れ合いにならないような距離感も必要」という藤巻さんの言葉には、スポーツだけでなくビジネスにおいても大切なことではないかと、ほかの登壇者から共感の声が上がりました。
ラッシュジャパンでPeople(人事)部門責任者をつとめる安田雅彦さんは、「女性のヘルスケアについて、意識してマネジメントできている男性管理職は、日本では非常に少ないと思います」と指摘。自身も、女性メンバーが多く活躍する組織の中で、試行錯誤しながら女性をサポートしてきたそうです。「今後、男性管理職を啓発するようなコンテンツが出てくることに期待したい」と語りました。
企業のダイバーシティ支援に取り組む株式会社アワシャーレ代表取締役の小嶋美代子さんも「日本企業が設けている制度は99%マジョリティのためのもので、管理職や指導者が、女性のヘルスケアについて理解しようというスタートラインにさえ立てていない場合が多い」と感じています。男性だけでなく女性も、自分の体を守るため、まずは勉強する機会を持つことが大切とアドバイスしました。
「自分自身の心や体について知る、”ウェルネスリテラシー”を上げることが大切だと思います」と語るのは、日本の「フェムテック」市場を牽引するfermata(フェルマータ)株式会社のCCO・中村寛子さん。日本では、心や体の問題がタブー視されることが多いため、例えば生理の症状についてモヤモヤを抱えていても、「悩み」として自覚できないことが多いのだそうです。ほかの人の体験を聞いたり、体について学ぶことで、自分が本当はどうしたいかを考えるきっかけになるといいます。
市場拡大を続ける「フェムテック」最前線
イベントの後半では、世界中のフェムテック製品をキュレーションし、オンラインストアや実店舗で販売するfermataの中村さんに、フェムテック市場の最新事情をお話いただきました。
フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた言葉で、テクノロジーを使って、女性の体にまつわる悩みや課題を解決していくプロダクトやサービスのこと。2012年ごろ、ヨーロッパで生まれた言葉だそうです。フェムテックの市場規模や、フェムテック製品・サービスを手がける会社数も増加を続けており、今、世界で注目されている産業のひとつです。
フェムテックの広がりによって、女性の生理用品の選択肢が広がったほか、アスリートのための月経周期管理アプリや、妊よう力(妊娠しやすさ)を自宅で測れるキット、骨盤底筋を鍛えるデバイスなど、さまざまな製品・サービスが生まれています。
fermataオンラインショップのほか、乃木坂の実店舗でも、世界のフェムテック製品を実際に見て触ってみることができますので、興味のある方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
サーキュラーHRでは、これからも、働く女性の心と体のヘルスケアについて、皆さんと一緒に考えていきます。
イベントにご参加いただいた皆様、ご登壇いただいたゲストの皆様、本当にありがとうございました。
【登壇者プロフィール】
大和シルフィード 監督 藤巻藍子
1981年生まれ、静岡県富士宮市出身。
日本体育大学を卒業後、アルビレックス新潟レディースで活躍。引退後は指導者として、アスルクラロ沼津女子チーム監督等を経て、2017シーズンから大和シルフィードの監督に就任。
2020シーズンは、なでしこリーグ1部2部合わせて20チームで唯一の女性監督として指揮をとる。
JFA公認A級ライセンス保有。現在はチームを率いるのと同時に、「WEリーグ所属のチーム及びWEリーグ所属のプロ選手の指導ができる人材を養成すると同時に、世界のサッカー界における女性指導者のリーダーとなる人材を育成する」ことを目的に日本サッカー協会に新設されたAssociate-Pro (A-Pro) コーチ養成講習会の受講も進めている。
ラッシュジャパン 人事部長 安田雅彦
1989年南山大学卒業。西友にて人事採用・教育訓練を担当後、子会社出向の後に同社を退社。2001年よりグッチグループジャパン(現ケリングジャパン)にて人事企画・能力開発・事業部担当人事など人事部門全般を経験。2008年からはジョンソン・エンド・ジョンソンにてHR Business Partnerを務め、組織人事やTalent Managementのフレーム運用、M&Aなどをリードした。2013年にアストラゼネカへ転じた後に、2015年よりラッシュジャパンにて現職。
株式会社アワシャーレ 代表取締役 小嶋美代子
一般社団法人経営倫理実践研究センター フェロー
NPO法人GEWEL 代表理事
芝浦工業大学 講師
東京都台東区男女共同参画推進会議委員
1989年大手IT企業にコンピュータエンジニアとして入社、金融機関向けシステム開発に従事。先端技術教育や大規模システム導入教育などのプロジェクトリーダーおよび管理職を経験。ブランディングおよびダイバーシティ推進を牽引。
2017年独立。企業、大学、地方自治体、社会活動など多角的にダイバーシティ&インクルージョンに関わっている。
fermata(フェルマータ)株式会社 CCO 中村寛子
Edinburgh Napier University (英)卒。
専攻は、Business Studies with Marketing。グローバルデジタルマーケティングカンファレンス、ad;tech/iMedia Summit を主催している。dmg::events Japan株式会社に入社し、6年間主にコンテンツプログラムの責任者として従事。2015年にmash-inc.設立。女性エンパワメントを軸にジェンダー、年齢、働き方、健康の問題などまわりにある見えない障壁を多彩なセッションやワークショップを通じて解き明かすダイバーシティ推進のビジネスカンファレンス「MASHING UP」を企画プロデュースし、2018年からカンファレンスを展開している。2019年にCEOのAminaとともにfermata株式会社設立。主にコミュニティイベントの企画運営や法人営業を統括している。
サーキュラーHR~「人材ロス」ゼロ社会を目指して~
Warisプロフェッショナル~ビジネス系・女性フリーランス × 企業のマッチングサービス~
Warisワークアゲイン~女性のための再就職支援サービス~
Warisキャリアエール~女性のためのキャリア伴走サービス~