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「マイノリティ人材」を組織の活力に!Withコロナ&SDGs時代の人材活用セミナーレポート

2020年7月22日

新型コロナウイルスの影響により、企業の人材採用にも大きな影響が出ています。ビジネスを取り巻く環境や、働き方が大きく変化している今こそ、多様なマイノリティ人材を活用することは、組織にとって中長期的なメリットになります。

そこで「サーキュラーHR」では、LGBT、妊活・不妊治療者、若い介護従事者、ホームレス状態の方とその予備軍、長期離職中の主婦など、さまざまなマイノリティ人材の採用サポートを行っている企業5社のキーパーソンをお招きしたオンラインイベントを開催。

それぞれの企業が熱いプレゼンを繰り広げ、マイノリティ人材と一緒に働くためにどんなことが必要か、ディスカッションも大いに盛り上がったイベントの様子を、レポートでお届けします。
 

LGBTの求人情報サイト「JobRainbow」

最初に登壇したのは、LGBTの転職・就活求人サイトを運営する、株式会社JobRainbow代表取締役の星賢人さん。日本では、全人口の8.9%、およそ1,100万人がLGBTと言われています。多くの当事者が、職場で差別的な発言を経験し、カミングアウトすることができずにいるそうです。そんなLGBTの当事者と、LGBTフレンドリーな企業を結びつけるプラットフォームとしての役割を果たしているのが、JobRainbowです。
2020年9月26日(土)、27日(日)には、日本最大のLGBTフレンドリー企業の合同採用イベント「ジョブレインボーLGBT仕事博2020オンライン」の開催が決まっているそうです。

星さん「LGBTの人びとを理解し、支援する人のことを”アライ”といいます。アライであることは、なかなか外からはわからないもの。アライだということを示すレインボーのステッカーがあるので、関心がある方はぜひ身に着けてください」

※星賢人さんのインタビューはこちら
 

妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」

続いて登壇したのは、妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」を運営する株式会社ファミワンの代表取締役、石川勇介さんです。5.5組に1組の夫婦が妊活のために検査や治療に取り組み、およそ18人に1人が体外受精で誕生する時代。スケジュール調整の難しさや通院の負担などから、不妊治療を理由に退職する人が増えているといいます。ファミワンでは、妊活の専門家によるLINE相談や、企業向けの妊活セミナーなどを実施。また、株式会社Warisと共同で、妊活中の人が自分らしく働くためのジョブマッチングサービスも手がけています。

石川さん「どんな人でも働きやすい、お互いの個性を受け入れて前向きに過ごせる社会になるといいなと思います」

ヤングケアラーの就職・転職を支援するYancle(ヤンクル)

3番目の登壇者は、家族の介護をしている20~30代の就職・転職を支援するYancle(ヤンクル)を運営する、株式会社ボーダレス・ジャパン Yancle事業部代表の宮崎成悟さん。親や祖父母、きょうだいのケアをしている40歳以下の若者、いわゆるヤングケアラー・若者ケアラーが、日本にはおよそ54万人いるそうです。介護を理由に離職する年間約10万人のうち、25%程度がヤングケアラー・若者ケアラーだといいます。自身も介護離職の経験を持つ宮崎さんは、働きながら介護をする若者の転職支援サービスを立ち上げることを決意。介護経験のあるスタッフが求職者に寄り添うエージェントとして、Yancleを創業しました。

宮崎さん「介護をしている若者は、基本的にやさしくて思いやりのある方が多いです。これを機に、ヤングケアラーという存在を知っていただけたらうれしいです」

ホームレス状態ならびにその予備軍人材に寮付きの求人を紹介する「いえとしごと」

4番目の登壇者は、ホームレス状態の人材に寮付きの求人を紹介するサービス「いえとしごと」を運営する、Relight株式会社の代表取締役社長、市川加奈さんです。ホームレスというと、日本では路上生活者のイメージが強いですが、実際には、派遣切りなどさまざまな理由で住まいを失った「見えない」ホームレスが、東京だけで4,000人以上いるそうです。孤独で情報につながることが難しいそれらの人材に、寮付きの仕事を紹介するのが「いえとしごと」のサービス。特にここ数ヶ月は、新型コロナウイルスの影響で、これまでは家も仕事もあった人たちからの相談が増えているといいます。

市川さん「ホームレスというのは、その人が置かれている状態にすぎません。状況だけで人を判断せず、ひとりの人間として見てほしいと願っています」

主婦の再就職事業「Warisワークアゲイン」

最後に登壇したのは、主婦の再就職事業「Warisワークアゲイン」を運営する株式会社Warisの小崎亜依子さん。女性が育児や介護、パートナーの海外転勤などを機に一度離職すると、正社員で再就職することが難しく、就職しても賃金も下がってしまう場合が多いという現実があります。再就職を望む主婦人材と、企業をマッチングするサービスを手がけているのがWarisワークアゲインです。多くのワークアゲイン人材が、高いモチベーションや向上心、幅広い経験を持っており、「人材のブルーオーシャン」だと小崎さんは言います。インターンシップを通じた主婦の採用支援も行っているそうです。

多様な人材が安心して働ける企業は、生産性が向上する

小崎さん「企業の人事担当者の方が、もし離職を経験した主婦の方のレジュメを見る機会があったら、ブランクの期間に面白い経験をしているかもしれないから、話を聞いてみようと思っていただけると、可能性が広がるのではないでしょうか」

各社のプレゼンテーションに続いては、パネルディスカッションのパートです。最初のテーマは「マイノリティ人材を採用するにあたり、企業が抱きがちな懸念を教えてください。また、その対応はどうしていますか?」

いえとしごとの市川さんによると、「企業にとって一番気になるのは、なぜホームレスになってしまったのかという経緯の部分」。いいところも悪いところも含め、包み隠さず伝えるようにしているそうです。

Yancleの宮崎さんは「企業にとっては、介護を理由に一度離職した人材が、自分の会社でもすぐに辞めてしまうのではないかという不安があると思います」と語ります。ただ、実際には、多くのヤングケアラーが、少し勤務体制を整えるだけで日中は通常通り働けるため、特殊な事情がないかぎり、そのような心配はいらないと丁寧に説明することを心がけているといいます。

2つ目のトークテーマは「もし、組織のメンバーから自分の事情を打ち明けられたら、どう対応すればいい?」

「メンバーが安心して事情を打ち明けられる人になることが大切」と話すのは、JobRainbowの星さん。メンバーから打ち明けられたら、まずは「話してくれてありがとう」と感謝を伝えることが大切だといいます。その上で、本人から聞いたことを、誰にどこまで共有していいのか、必ず許可を取ることも重要なポイントです。

これに続けてファミワンの石川さんは「中途半端な知識で『わかるよ』と言わないほうがいい」と指摘。当事者にしかわからないこともたくさんあるので、いろいろ教えてもらうという姿勢で、本人にとって何が助けになるのかを聞いていくことの大切さを強調しました。

Warisの小崎さんも「女性と一言で言っても、ひとりひとりみんな違います。たとえば、結婚したことを会社では知られたくない女性もいるでしょう。そういった前提で、互いに対話しながら理解を深めていくことが大切です」と語りました。

また、それぞれの登壇者が、互いの事業への共感や関心を伝え合う場面も。ファシリテーターをつとめたサーキュラーHRの稲葉編集長は「今回、あえて”マイノリティ人材”という言葉を使いましたが、実際にはどの事業も、私たちの隣に当たり前にいる人たちの課題解決を目指す取り組みだと気づきました」と言います。

「多様な人材が安心・安全に働ける場をつくり、働く人が能力を発揮できるようになれば、生産性が向上し、企業の発展につながります。私たちも、さまざまな背景を持つ人が集まる組織づくりを支援していきますので、仲間になっていただけたらうれしいです」と呼びかけました。

【登壇者プロフィール】

株式会社ファミワン  代表取締役社長 石川勇介

愛知県犬山市出身。自身の妊活で強く感じた課題を解決するため、2015年に株式会社ファミワンを創業。前職の国内最大級の医師向け情報提供企業のエムスリーでは、新規事業「AskDoctors評価・開発支援サービス」の担当として企画、営業、運用まで全て実施。優しい長男と元気な長女の二児の父。家庭では土日の料理、ゴミ捨て、洗濯担当。妻には頭があがらない。

株式会社JobRainbow  代表取締役 星賢人

1993年生まれ。板橋区男女平等参画審議会委員。22才で東京大学大学院在学中に起業。数々のビジネスコンテストにて優勝、フォーブスが選ぶアジアで最も影響のある若者30人(Forbes 30 under 30)の社会起業家部門に日本人として唯一選出。ソフトバンクの孫正義が直々に選出した孫正義育英財団の財団生としても選出。若手起業家として、国内・海外のテレビやマスメディアなどでも注目を集めている。

Relight株式会社 代表取締役社長 市川加奈

1993年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒。
幼少期からお年寄りが好きで、高校生まで介護福祉士を目指す。大学では海外を知りたいと思い、国際協力を学ぶ。途上国の貧困問題を調査するうちに、日本にも貧困問題があることに気づき、ホームレス問題の解決を志すようになる。
全国の炊き出しや夜回りに参加し、支援者や当事者と対話をした結果、支援ではなく、持続可能なソーシャルビジネスをするために、ボーダレス・ジャパンに入社。約3年間、JOGGOにてバングラデシュと日本の生産管理や、精神疾患・発達障害者が一人前の職人として働く国内工場の立ち上げを行う。生産体制が整ったタイミングで退職し、ホームレス問題をテーマにした事業を開始。

Yancle 代表 宮崎成悟

1989年生まれ。家族介護歴14年目。立教大学卒業。新卒で医療機器メーカーに入社するが、3年で介護離職。その後、医療・介護系ベンチャー企業複数社を経て、Yancle(ヤンクル)を創業。2020年1月ボーダレスジャパン・グループに参画

株式会社Waris  ワークアゲイン事業 統括/Waris Innovation Hub プロデューサー 小崎亜依子

慶應義塾大学総合政策学部でファイナンス理論を学び、野村アセット・マネジメントを経て、株式会社日本総合研究所で10年弱、ESG投資の普及啓発および金融機関による実践を支援。働き方の現場でインパクトを起こそうと2015年Warisに参画。キャリアブランクのある女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」を手掛けるとともに、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。2019年7月から2020年6月まで、東京大学のスタートアップ支援組織であるFoundXにて、スタートアップ支援のノウハウを学ぶ。

サーキュラーHR~「人材ロス」ゼロ社会を目指して~

https://circularhr.waris.jp/

Warisプロフェッショナル~ビジネス系・女性フリーランス × 企業のマッチングサービス~

https://waris.co.jp/service/waris-professional

Warisワークアゲイン~女性のための再就職支援サービス~

https://waris.co.jp/service/waris-work-again

Warisキャリアエール~女性のためのキャリア伴走サービス~

https://careeryell.waris.jp/