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どうする?Withコロナ時代の人材採用
~コカ・コーラ ボトラーズジャパン 人財開発部長 東由紀さんインタビュー

2020年7月27日

2021年度の新卒採用にいち早くオンライン選考を導入し、注目を集めているコカ・コーラ ボトラーズジャパン。具体的な方法をご紹介した前回の記事に続き、人財開発部長の東由紀さんに、オンライン選考を円滑に進めるポイントや、内定後のケアや研修について教えていただきました。

在宅勤務では「効率的になりすぎない」工夫も必要

編集部(以下、――):新型コロナウイルスの影響で、コカ・コーラ ボトラーズジャパンでも在宅勤務を取り入れていると聞きました。緊急事態宣言が解除された後は、どのような勤務体制をとっていますか?

東さん(以下、敬称略):6月末まで、業務上可能な人は在宅勤務を続けることにしています(※編集部注:取材は6月上旬に行いました)。拠点や部門によっても異なりますが、出社できる日数や、人口密度の上限を定めて調整しています。

――徹底した対策をとっているのですね。

:当社は飲料を扱っていますので、もともと、衛生に対する意識が高いということはあると思います。緊急事態宣言が出ている間も、在宅勤務が難しい現場のスタッフを最優先に、マスクや消毒液を配布するなどの対策を行ってきました。

営業職などは、直接出向いて商談をすることができないので、当初は難しい部分もあったようです。少しずつオンラインで商談ができるようになり、移動時間がない分、より多くのお客様とお話できるという効果も見え始めました。ただ、実際に製品を持っていき、手に取っていただくことができないので、その点は今後工夫が必要だと思っています。

――在宅勤務では、逆に働きすぎてしまうという問題も指摘されています。

:私自身も、まさにその課題を実感しています。在宅勤務なら会社支給のPCが手元にあるので、いつでもメール対応が簡単にできる状況にあります。休暇を取っていても外出は自粛しているため、急なミーティングにも参加できるだろうと部下に期待することがあってはいけません。

移動時間がないから楽になるかといえばそうともかぎらず、一日中、オンラインでのミーティングや面接の予定が詰まっていて余裕がないときもあります。オフィスに出社していたときは、たとえば会議室を出て移動している間に何気ない会話があり、そのような時間に認識のずれがないか確認したり、部下の様子を確認したりするなど、案外大切な情報を交換していたのだなと気づきました。

――確かにオンラインミーティングでは、議題が終わると突然画面が消えてしまって、リアルな会議のような余韻がないですね。

仕事の進め方は間違いなく効率的になったと思うのですが、今度は逆に、効率的になりすぎない工夫が必要かもしれません。

私は2月中旬にコカ・コーラ ボトラーズジャパンに入社したのですが、3週間ほどオフィスに出社して、その後すぐ在宅勤務になりました。社内でも、オンラインで初めて対面する人が多いです。もともと、オフラインで関係性ができている相手なら、オンラインになっても安心して話せますが、参加者の中で自分ひとりだけ初対面だと、少し辛いなと思うことはありますね。私の歓迎会もまだ実現していませんが、オンライン歓迎会になるかもしれませんね!
 

Withコロナの時代に求められる、ぶれない価値観

――オンライン選考を導入するにあたり、社内から不安の声などはありましたか?

東:実は、新型コロナウイルス感染拡大の前から、地方や海外在住者など多様な人材にアプローチするための施策として、オンライン選考導入を検討していたため、特に反対意見はなく、早い段階でオンライン選考の導入を決めることができました。学生を集めることが新型コロナウイルス感染拡大につながるリスクとなり、学生に不安を感じさせる方がマイナスであるという価値観が社内に浸透していると感じました。

――食品会社として安心・安全を一番大切にするべきという明確な軸が、人についてもあてはまっているのですね。

:緊急事態宣言が解除されたから、すぐにすべて対面に切り替えるというような短期的な視点ではなく、長期的な視点で、今何を優先しなければならないのか、ぶれずに考えることが大切だと考えています。

――コロナ離職(企業のコロナ対応に不満を感じた離職)などという言葉も生まれています。今後は、学生が就職先を選ぶときに、オンライン化のスマートさが基準のひとつになるかもしれませんね。
 

今まで目立たなかった学生も話しやすい環境に

――今回、オンラインで面接を受けた学生たちに、たとえば映像がうまく撮影できないなどの戸惑いは感じられましたか?

:今、こうしてPCでお話していても、PCによって内蔵カメラの位置が違うので、画面に映る相手の画像を見ながら話していると、必ずしも相手と目が合わないですよね。自然に目線を合わせるためには、相手の映像をカメラの近くに配置して話すなどの工夫が必要になります。その点学生たちは事前に調べたうえで、自宅でも部屋を明るくしたり、カーテンや布で背景を整えるなど、しっかり準備をしてのぞむ人が多かったです。

――オンライン面接になると、コミュニケーションにも影響があるのでしょうか?

:オンラインでの会話には、わずかなタイムラグがありますよね。ふだん会話をするときに、相手の反応をみながらテンポよく、スピード感のある会話をするような活発な学生は、面接官と言葉が被ってしまったり、温度感が読み取れず、少し話しにくそうな印象を受けました。

逆に、一見物静かだけれど、自分の中でじっくり考えて、ある程度考えがまとまってからロジカルに話すタイプの学生は、通常の集団面接では目立ちにくいですが、オンライン面接では比較的話しやすかったのではないでしょうか。

――コミュニケーションの方法が変わったことで、今までスポットライトが当たりにくかった個性を見きわめられるというのは興味深いですね。
 

オンライン選考では、内定後のケアも重要

――学生たちは、オンライン選考にどんな印象を持っているのでしょうか。

:面接が終わった後、学生に感想を聞いてみました。オンライン面接そのものについて、マイナスの印象を持っている学生はほぼいなかったです。ただ、最終面接までオンラインで行ったので、自分が働く場所を実際に見ていない、同期入社のメンバーにも会えていないという不安はあるようです。

当社でも、内定者向けにオンラインオフィスツアーを実施したり、オンラインのコミュニティをつくって内定者同士のコミュニケーションがとれるようにすることなどを検討しています。

――オンライン選考を導入する企業が増えていると思いますが、面接後のケア、内定者同士の横のつながりをつくるというのは盲点ですね。

:対面の面接であっても、内定が出た後に、「面接で失敗したと思っていたのに、自分のどこが評価されてなぜ採用されることになったのかわからない」という学生は意外に多いです。最終面接の面接官から、良かった点や、業務の上で強みになりそうなポイントをフィードバックすると、入社後の活躍のイメージを持つことができるので、有効かもしれません。

――どこを評価されて入社したのかがわかれば、入社後のエンゲージメント向上にもつながりそうですね。Withコロナの状況が続く中、内定式などは行う予定ですか?

:内定者が一堂に会するような機会は、基本的に想定していません。内定式もオンライン化する方向で検討しています。せっかくですから、何か驚きのある演出を考えたいですね。今後、長距離の移動ができるようになった段階で、数人ずつ、広い部屋で密を避けながら、オフィスを見学する機会を設けることも検討しています。
 

Withコロナ時代の人材育成のあり方とは?

――オンライン選考で採用した社員をどのように育成していくか、研修の方法などはどう考えていますか。

:今後事態が収束するとして、何をオンラインで行うか、何を集合研修にするかの判断が必要になると思います。従来のように、全員が同じ場所に集まって、長時間研修をするのは難しいでしょう。一方で、リアルな場で顔を合わせて話し合うからこそ育まれるスキルや人間関係もあると思うので、仕組みを工夫する必要がありますよね。

たとえば、集合研修は1日だけにして、知識は事前にオンラインでインプットしておき、リアルな場ではディスカッションに集中するのもひとつの方法かもしれません。ディスカッションの後は、またそれぞれの職場に戻って分析を深め、最後にオンラインで成果を発表するなど、リアルとオンラインを複合的に組み合わせることを想定しています。

――オンラインだからこその利便性もあるかもしれませんね。

:3日間行っていた集合研修が1日になれば、職場を離れる時間が短くなりますし、宿泊費などを削減して研修費に充てることができるようになります。これは大きなメリットだと考えています。

当社は全国に300以上の拠点を持っています。部門や職場が違うと、どうしてもコミュニケーションが希薄になりやすいです。いろいろな仕事を経験することで部門間の交流を促進し、それぞれの部署がサイロ化しないよう、新たな知見を取り入れるよう工夫していきたいですね。
 

<サーキュラーHRへのヒント>

  • 在宅勤務では、「働きすぎない」「効率的になりすぎない」工夫も必要になる。
  • 学生を集めることが新型コロナウイルス感染拡大につながるリスクとなり、学生に不安を感じさせる方がマイナスであるという価値観が社内にあったため、早い段階でオンライン選考の実施を決めた。
  • オンライン面接では、相手の反応をみながらテンポよく、スピード感のある会話をするような学生よりも、自分の中でじっくり考えて、ある程度考えがまとまってから話すタイプの学生が比較的話しやすい傾向がある。
  • 内定者向けにオンラインオフィスツアーを実施したり、内定者同士のコミュニケーションを目的としたオンラインコミュニティの設置、リアルとオンラインを複合的に組み合わせた研修の実施など、内定後・入社後の対応にも工夫が必要。

【プロフィール

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 東 由紀
人事/総務本部 人事統括部 人財開発部 人財開発 部長

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