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オンライン選考が採用の可能性を広げる
~コカ・コーラ ボトラーズジャパン 人事・総務本部 鈴木由加里さんインタビュー

2020年7月15日

世界中に展開するコカ・コーラグループの中でも世界有数の規模を誇るコカ・コーラ ボトラーズジャパン。2021年度の新卒採用にいち早くオンライン選考を導入して話題になっています。どんな方法で選考を行っているのか、実施してみてわかったメリットや課題について、採用部門のリーダーを務める鈴木由加里さんにお話をうかがいました。

※取材は2020年5月、オンラインで行いました。

ライブ配信の会社説明会で、現場の雰囲気が伝わる

編集部(以下、――):私たちはサーキュラーHRというメディアを通じ、人と“はたらく”のあり方を再構築し、「人材ロス」がゼロになる社会を目指しています。コカ・コーラ ボトラーズジャパンでは、ダイバーシティ経営推進を掲げ、さまざまな取り組みをしておられます。2021年度からは、採用面接をオンラインで行っているそうですね。やはり、新型コロナウイルスの影響で新たな採用方式を検討されたのですか?

鈴木さん(以下、敬称略):もちろん、それが一番のきっかけですが、実は以前から、オンライン選考を行う必要性を感じていました。というのも、当社は全国に17の工場、351の営業拠点を持っています。非常に広範囲に、多くの従業員を採用する必要があるのです。
 

<コカ・コーラ ボトラーズジャパン 提供>

従来は、東京や大阪など、大都市に候補者に集まってもらい、会社説明会と面接を行っていました。地方出身の方にとっては、時間やお金の負担も大きかったなあと、今、オンライン面接をしながらあらためて感じています。

今年3月ごろから、いよいよ学生を集めて説明会を行うことが難しい情勢になりました。そこで、ライブ配信による説明会を実施しました。本社勤務の社員だけでなく、現場の工場で活躍するエンジニアと中継をつなぐなど、物理的な制約がない分、当社の多様な側面を見てもらうことができたのではないかと思います。
 

1次面接は学生が自分で録画

――オンラインでの採用面接は、どんな方法で行いましたか?

鈴木:Web面接のためのさまざまなツールの中から、採用管理システムと相性の良いツールを選び、導入しました。

1次面接では3つの質問を用意し、時間を決めて、学生に自分で録画してもらう形をとりました。多くの学生が、スマホを使って撮っていたようです。いわゆる自己紹介的な内容は、エントリーシートから十分に伝わってきます。ここでは、何らかの課題に対して具体的にどんな行動をとるか、個人の考え方や行動力を見る質問をしました。

従来は集団面接を行っていたのですが、録画であれば担当者が1対1でじっくりと確認することができます。学生のアテンドなど、人事側の負担もかなり軽減されました。

2次面接以降はやはりオンラインで、担当者と学生がコミュニケーションをとる形で行いました。

――オンライン選考の導入にあたり、事前に懸念していたことはありますか?

鈴木:学生が、オンラインできちんと評価してもらえるのかどうか不安を感じるのではないかということは懸念していました。そこで、大手就職サイトが行ったオンライン面接に関する学生の意識調査などもチェックしました。その調査によると、実際にオンライン面接を経験した学生の半数近くが、オンライン面接に前向きという結果が出ています。実際、1次面接の録画を見ていても、カメラに抵抗のない学生が多いことを実感しました。

――面接をする側として、不安なことや難しかったことはありますか?

鈴木:先ほどお話した調査でも、オンライン面接を経験した学生の声として「相手の表情や反応がわかりにくい」という声がありました。そこで面接担当者にも、「オーバーリアクションにしてください」ということは伝えていました。

また、担当者からは、「面接の途中で、突然通信が切れたらどうするのか?」など不安の声も上がっていました。そこで、事前にシステムの使い方を説明する動画を見てもらい、操作が不安な社員には個別フォローをするなどの工夫をしました。実際に使ってもらうと、トラブルもほとんどなく、「けっこう便利だね」という声が多かったですね。

当社は、国籍やカルチャーなど、非常に多様なバックグラウンドを持った社員が多いのが特徴です。最近は商談もオンラインで行うことが増えていますし、社員がもともと変化に慣れていて、新しい施策を導入しやすい、浸透しやすい社風であることも、オンライン選考をスムーズに行うことができた要因だと思います。
 

オンライン選考で、地方出身の学生の応募が増えた

<今回の取材もオンラインで行いました>

――実際にオンライン選考を行ってみて、当初の想定通りスムーズに面接ができましたか?

鈴木:そうですね。現在、2次面接を終えたところですが(2020年5月時点)、思っていたよりもまったく問題なく、「例年とあまり変わらないな」という印象です。1次面接の録画でも、特に禁止事項などは設けなかったのですが、皆さん自宅でもリクルートスーツを着て髪型を整えて参加していました。ゼミでの研究成果などを用意する方もいて、それは録画ならではの工夫だったかもしれませんね。

――オンライン選考の導入で、地方出身の学生の応募が増えたという印象はありますか?

鈴木:はい。北海道や山陰など、以前は複数回の説明会や面接に来るのが難しかった地域の学生が増えました。遠方に住んでいる学生の場合、従来は往復数万円をかけて選考に来てくれていました。でも、オンラインなら自宅にいながら選考を受けることができます。実際、選考の中で学生と話していても、「オンラインで説明会や面接を受けられるのですごく助かります」と言われたのが印象的でした。

――オンライン選考を導入したことで、これまでアクセスできていなかった層にもリーチできるようになったのですね。来年以降も、オンライン選考は継続する予定ですか?

鈴木:そうですね。少なくとも、2次面接まではオンライン選考を行う予定です。今、各エリアの人数を確認し、計画を立てているところです。実は昨年から、海外に留学している学生の選考はオンラインで進めていました。オンライン選考によって、候補者の幅を広げることができる可能性を感じています。
 

オンライン選考が、人事の働き方改革につながる

――来年以降の課題だなと感じていることはありますか?

鈴木:当社は飲料を扱っているので、たとえば営業職でも、納品時に重い製品を運ぶことがあります。そのため、身体に負荷がかかる可能性があることを面接で説明するのですが、オンライン面接の場合、ご本人のスポーツ歴などから体力などを推察して説明するので、伝わりにくい部分があります。対面ならお互い身振り手振りで伝えられることも、画面だけで伝えあうのは想像以上に難しいものだと感じました。

――確かにオンライン面接では、立ち居振る舞いを含め、話し言葉以外の情報が伝わってきにくい部分がありますね。より対面に近い自然な形で実施する工夫が必要になるかもしれません。最後に、これからオンライン選考を導入しようと考えている企業の担当者に向けて、アドバイスはありますか。

鈴木オンライン選考は人事の働き方改革にもつながると、今回の経験を通じて実感しました。新卒採用の時期には、人事のメンバーが連日残業したり、面接時の人繰りに頭を悩ませている企業は多いと思います。その点、オンライン選考では、面接時の候補者のアテンドなどの業務が発生しないため、コア業務に集中することができます。学生だけでなく、人事にとってもメリットが大きい採用方法だと思うので、ぜひ一度試してみてくださいとおすすめしたいです。
 

<サーキュラーHRへのヒント>

  • 説明会をライブ配信で行うことで、本社勤務の社員だけでなく、現場で活躍するメンバーの声など、会社の多様な側面を見てもらうことができた。
  • 多くの学生がオンライン選考に対して前向きであり、社内の担当者にも、事前にシステムの操作法などを共有することで、大きな問題は起こらなかった。
  • オンライン選考の導入により、以前は複数回の説明会や面接に来るのが難しかった遠方の学生の応募が増えた。
  • オンライン選考では、面接時の候補者のアテンドなどの業務が発生しないため、人事担当者がコア業務に集中することができ、「人事の働き方改革」につながる。

【プロフィール】

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 鈴木 由加里
人事・総務本部 人事統括部 人財開発部 採用課リーダー。

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