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自然の中で働き、人生の「余白」を取り戻す

~カンターキャラバン・並木渉さんインタビュー

2021年2月5日

コロナ禍で、オフィスのあり方が見直されつつある現在。リモートワークやワーケーションが注目を集めています。

キャンピングトレーラーがオフィスになり、自然の中でミーティングができるサービスを運営する「カンターキャラバンジャパン」代表の並木渉さんに、日常を離れることのメリットや、これからの社会で重視される価値の多様性についてお話をうかがいました。

日常を離れた環境でクリエイティビティを発揮する

稲葉編集長:カンターキャラバンとは、どんなサービスなのでしょうか。

並木渉さん(以下、敬称略):キャンピングトレーラーを自然の中に置いて、開放的な雰囲気の中でオフサイトミーティングができるサービスです。改装したトレーラーをこちらで用意して、企画から当日の運営まで、私たちがトータルでサポートしています。

並木:カンターキャラバンはもともと、オランダの環境保護団体が、自然の良さを知ってもらおうというコンセプトで始めたプロジェクトです。私自身、サラリーマンだったとき、周りの目や人からの評価が気になって疲弊してしまった経験があり、日常を離れて環境を変える大切さを強く感じていました。

 

日本でもカンターキャラバンのサービスを根づかせたいと思い、実証実験を繰り返して、2019年6月にサービスをスタートしました。現在は、主に都市近郊の大企業のお客様に興味を持っていただき、日帰りだけでなく、1泊2日、2泊3日といった泊まりの合宿のご要望も増えています。

 

――自然の中に身を置くと、気分が変わって仕事もはかどりそうですね。

 

並木:単純な作業や報告会よりも、新規事業の企画や中長期計画の策定など、クリエイティブな業務に活用していただくことが多いようです。

 

従来のビジネスでは、いかに効率的に作業をこなすかということが重視されましたが、AIが発達した現代、人間に求められるのは、AIにはできないクリエイティビティを発揮する仕事です。いつものオフィスで、既存の枠組みの中で会議をするのではなく、日常とは異なる環境の中で話し合うことで、本当にフォーカスすべきことが見えてくると考えています。
 

自然の中で過ごすことで、都市のヒエラルキーから脱却する

稲葉:日常を離れて、自然の中で話し合うことが大切なのですね。

並木:もちろん、自然の中で過ごすことでリラックスできる効果もありますが、一番重要なのは、都市部のヒエラルキー構造から脱却することだと考えています。

並木:個人的な印象ですが、都市部ではどの街に住んでいるか、どのビルにオフィスがあるかによって見えないヒエラルキーがあるように感じます。私自身も東京で働いていたとき、訪問先で「丸の内のこのビルにオフィスがあるならすごい会社なのだろうな」などとふと感じることがありました。どこかでヒエラルキーを意識していた気がするのです。

稲葉:確かに都心では、お互いにマウンティングをし合い、自分で自分を縛っている状況があるかもしれませんね。

並木:実は、郊外にオフィスがある会社のほうが、高い技術力やポテンシャルを持っているかもしれません。肩書きやヒエラルキーを脱却して、都心にオフィスを持つことやより多くのお金を稼ぐことだけが価値ではないという「価値の多様性」を認めることが、これからの時代は重要になっていくと考えています。

稲葉:肩書きやヒエラルキーから抜け出すというのは、それらに依存してきた人にとっては、自分がなくなってしまうような恐怖を感じることかもしれません。並木さんは、サラリーマンから独立して事業を始めるとき、どんな思いでしたか?

並木:都心の会社でバリバリ働いていた時期には、心の中にどこか満たされない部分がありました。プライベートでは不育症に悩んでいたこともあり、お金では解決できない課題があることを突きつけられる日々でした。もちろんお金を稼ぐのは大切なことですが、お金で買えるものは限られています。社会課題を解決することと、経済的な循環が両立するような仕組みをつくるために何かできないかと考えるようになったのです。
 

変化の時代に可能性を広げる「ポテンシャル採用」

稲葉:私たちはサーキュラーHRプロジェクトを通じて、人という「資源」を使い捨てずに育て、循環させる社会の実現を目指しています。社会的な価値を、経済的な価値に紐づけるという意味で、カンターキャラバンの考え方に通じるものがあると思いました。

並木:人材が適材適所で活かされるためには、自分のスキルや経験がどんな場所で活きるのか、個人が知っておく必要があると思います。自分が力を発揮できると思っている分野と、実際に活躍できるフィールドが一致していないことは、案外多いのではないでしょうか。

稲葉:おっしゃる通り、自分自身が見た自己と、他者から見た自分にはずれがありますよね。特に長所は、自分にとっては当たり前すぎて、気づかないことが多いと言われます。自分の経験を客観的に見て、足りない部分は補いながら、やりたい分野の仕事につなげていくことが重要だと思います。

並木:例えば、ある仕事に対して、スキルや経験はないけれどモチベーションが高い人と、経験やスキルはあるけれどモチベーションがあまりない人がいるとします。半年間2人が同じ仕事をして、どちらがパフォーマンスが上がるかと言えば、おそらく前者のほうが何倍も成長するのではないかと思います。モチベーションで人材を採用するという考え方も、これからの時代は面白いかもしれません。

稲葉:人を「資源」と考えると、スキルや経験が完成された人材だけでなく、未経験でもポテンシャルを感じさせる人材に「投資」することも、今後企業にとってのメリットが大きくなりそうです。

並木:そんな価値観が広まれば、社会的な価値と経済的な価値が両立することになると思います。

働く人に人生の「余白」を取り戻してほしい

稲葉:新型コロナウイルスの流行で、カンターキャラバンの事業にはどんな変化がありましたか。

並木:企業の会議自体がなくなってしまったので、昨年10月ごろまでは厳しい状況が続きました。ただ、コロナ禍が落ち着いたらぜひ利用したいという問い合わせもあり、トレーラーの台数を増やすなど、春以降の活動を見据えて準備を進めています。現在は、リモートワークに対応したサービスの開発にも取り組んでいます。

稲葉:個人の働き方について、並木さんはどんな未来を実現したいと考えていますか。

並木仕事に限らず、「今、このとき」一番やりたいことに集中できる時間や空間を増やしたいと考えています。そういう環境で、人はもっとも生産的な活動ができると思うからです。オフィスで働いていると、電話が鳴ったり、誰かが怒鳴られる声が聞こえたり、自分の仕事だけに集中できないことも多いですよね。自然の中で過ごすことを通じて、働く人が人生の「余白」、純粋な自分の時間を取り戻してほしいなと考えています。

稲葉:カンターキャラバンが、人生の「余白」を生み出す役割を担っていくのですね。

並木:コロナ禍で働き方が大きく変わる中、お客様のニーズもどんどん変化していきます。「今、ここ」に集中できる時間や空間を演出するという軸はしっかりと持った上で、受け皿を大きくして、さまざまなニーズに応えられるような体制を整えていきたいです。

稲葉:先が読めない時代だからこそ、ビジネスにおいても柔軟さが求められていくのでしょうね。今日は貴重なお話、ありがとうございました。
 

<サーキュラーHRへのヒント>

  • カンターキャラバンジャパンでは、オフィスに改装したキャンピングトレーラーを自然の中に置いて、開放的な雰囲気の中でオフサイトミーティングができるサービスを提供している。
  • 日常とは異なる環境の中に身を置いて話し合うことで、ビジネスにおいてフォーカスすべきことが見えてくる。
  • スキルや経験が完成された人材だけでなく、未経験でもポテンシャルを感じさせる人材に「投資」することも、今後企業にとってのメリットが大きくなっていく。

【プロフィール】

カンターキャラバン 代表 並木渉

1986年生まれ。中央大学商学部卒業後、2009年キャタピラージャパン株式会社入社。工場の経理、原価管理を担当後、本社経理部にて会社全体の売上債権管理、固定資産管理を担当。2014年外資系バイオ医薬品メーカーバイオジェンジャパン株式会社シニアアナリストを経て、2015年株式会社Warisに入社。営業、経営企画を担当しながら、自身で事業の立ち上げ準備を行う。2019年6月に「カンターキャラバン」をサービスローンチ。

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