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「リーダーになることは面白い」と伝えていきたい~Waris共同代表 河京子インタビュー

2021年1月5日

サーキュラーHRの運営母体である株式会社Waris。「Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。」というビジョンを掲げ、ジョブマッチングやキャリアサポート事業を手がけています。3人の女性が共同代表として業務を統括する、ユニークな経営スタイルで創業8年目を迎えるWarisは、コロナ禍をどう乗り切り、どこへ向かおうとしているのでしょうか。

今回は、Waris共同代表の河京子が、共同経営のこと、女性リーダーを増やしたいという思い、これから挑戦したいことなど、本音で語りました!

 

まさか自分が経営者になるとは思わなかった

編集部(笠原):2020年は新型コロナウイルスが流行し、いろいろなことが変動した年でした。Warisにとって、そして河さんにとってはどんな1年でしたか。

河京子:本当に慌ただしかったですね。昨年末から不況の足音が聞こえ始め、それでも事業の上では攻めていこうと話していた矢先、コロナが流行し、前半は対応に追われました。年の半ばになってようやく視点を切り替え、社会の未来、会社の未来について考える余裕が出てきました。

笠原:「攻める」というのは、具体的にどんなことですか。

:2019年にコーポレートアイデンティティを刷新した段階で、「新たな挑戦をする個人の人生をサポートする」ことを意識していました。これまでは個人の”Live Your Life”、自分らしい生き方を支援するということに注力してきましたが、今後は女性起業家やリーダーを増やしたり、社会の多様性を実現したりといった「Live Your Lifeを増やす仕組み」作りにも幅を広げていきたいです。

笠原:仕組みを変えることは本当に大切ですね。多様性を実現したい、自分の周りの社会を変えたいと感じていても、「自分には無理」と感じてしまう女性は多いと思います。でも、思い切って声を上げれば力になってくれる人がいて、一歩前に進めるかもしれない。

:Warisは、私を含め3人の女性が共同経営しています。3人ともまさか自分が経営者になるとは思っていなかったんですが、共同代表の1人である田中が「経営者になって、大変なこともたくさんあるけれど、本当に楽しかった。そのことを皆にシェアしたい」と言っていたのが印象的でした。3人寄れば文殊の知恵という言葉もありますが、1人では難しいことも、3人で知恵を出し合えば何とかなるし、周りの人も助けてくれます。「リーダーになることは面白いよ」と言える経営者でありたいし、そのメッセージはこれからも発信していきたいと思っています。

笠原:「助けてくれる」というのは、本当にその通りだと思います。最初からうまくいかなくても、がんばって行動していると、手伝ってあげたいという人が現れるものですよね。

 

「女性3人の共同経営かつリモート経営」ってどんな感じ?

――Warisは3人の経営者が、福岡、東京、ベトナムの3拠点からリモートで共同経営するという珍しいスタイルを採っています。共同経営ならではのメリットや、「ぶっちゃけ大変だった」ことがあれば、ぜひ教えてください。

:3人それぞれが違うプロフェッショナリティを持っているので、創業時からこれまで、それぞれの専門性を活かせたことは大きなメリットだと思います。私たちは多数決ではなく、合議制で意思決定をしています。当然時間がかかるのですが、面倒でも、遠回りでも、お互いの意見に耳を傾け、尊重することを大切にし続けたいと考えているんです。とことん話し合って決めるので、揉めることはあまりないですね。

とは言え、物事を決めるときのプロセスやスピードは三者三様です。例えば私は非常にせっかちなのですが、米倉はすべての選択肢をテーブルに上げてしっかりと検討します。そのときは「早く決めたいんだけど…」と感じてしまうのですが、後になってみると、米倉の視点がなければ大変なことになっていたということばかりで(笑)、そういったプロセスの積み重ねが、今の信頼関係につながっていると思います。

一番大変だったのは、創業2年目の頃、メンバーが一気に増えたタイミングだったと思います。それまでは、私たち3人とほかのメンバーが、「創業メンバー」として常にフラットな議論をしながら事業を進めていたのですが、人数が増えたことで、意図せず社内に「階層」ができてしまいました。意見を言うときに遠慮するようになったり、お互いに対してフラストレーションがたまったりしてしまい、悪循環に陥っていた時期もあります。メンバーを含め、皆でコーチングを受けるなど、時間をかけてチームビルディングをしていきました。

――大変な時期を抜け出すために、河さん自身はどんなことをしたのですか?

:いろいろな人に相談もしましたし、組織づくりについて一から勉強しました。私がフラットな関係だと思っていても、メンバーにとっては威圧的に感じることがあるなど、コミュニケーションについても周囲からフィードバックをもらって改善していきました。本当に「皆に育ててもらった」と思っています。

 

誰もが自分の生き方を自由に選べる社会を実現したい

笠原:コロナの影響で「会社」のあり方も大きく変わろうとしています。河さんは、どんな会社が「いい会社」だと思いますか?

:私は、社会も、街も、会社も「ユニバーサル」であるべきだと考えているんです。Warisは創業当初から、メンバー全員リモートワーク・フレックスタイムを基本にしています。育児、介護などさまざまな要因があり、能力を発揮しやすい環境や時間帯は人によって違います。ハンディキャップを抱えた人が不自由を感じない状態は、ほかのメンバーにとっても心地いい状態だと思います。そういった意味で、会社も「ユニバーサルデザイン」を実現できるといいのではないでしょうか。

笠原:大企業が「ユニバーサル」を目指して既存の仕組みを変えていくには課題も多く、勇気がいると思うのですが、どのように理想を実現していけばいいのでしょう。

:今、大企業でも、仕組みを変えなければと真剣に考えてきた世代が決裁権を握り始めています。ジョブ型や成果型の人事制度への改訂など、変容の兆しが見えてきていることには希望を持っています。

笠原:少し視点を広げて「社会」の観点からは、5年後くらいにどんな社会が実現していたらいいと思いますか?

:90年前、イギリスの作家、ヴァージニア・ウルフは『自分ひとりの部屋』という作品の中で、「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」と書きました。1世紀近くが経って、女性の社会進出が進みましたが、性別による収入格差はいまだに存在します。

コロナ禍で夫婦共リモートワークになり、夫は書斎で仕事をするのに、妻はリビングで仕事をして、子どもの世話も妻がするというような家庭内格差も浮き彫りになりました。昨年11月に行われた調査では、2020年4月以降、失業・離職・休業・労働時間急減など、仕事になんらかの影響があった人は、女性が男性のおよそ1.4倍にのぼっています(※)。

育休を取った男性が出向させられたり、育児中の女性が仕事と家庭の両立に悩んで離職したりというような事例もまだまだあります。

旧態依然とした働き方のせいで悩んでいる人たちが、「二軍」の労働力扱いされず、何にも気にせず自分の生き方を選べる社会を実現したいですね。中でも、かつてウルフが指摘した「お金」と「場所」については、Warisがこれから提供していける価値だと思っています。

笠原:例えば「男性の育休取得率8割」をうたっている会社で、実際に男性が休んでいる日数は1週間にも満たないという事例もあるようです。

:制度として育休があっても、実際には休暇を取りづらい雰囲気があるのかもしれないですね。構造的な問題を解決していく必要があると思います。

 

広がるサーキュラーエコノミー。日本の課題は?

笠原:サーキュラーHRは「人材ロスゼロ」を目指して1年間活動してきました。今後、プロジェクトにはどんなことを期待しますか。

:コロナの影響もあり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の概念が確実に広がりつつあります。サーキュラーHRを始めた時は、「少し早かったかな」という思いもあったのですが、結果的にベストなタイミングでしたね。欧米では既に、SDGsの大切さがごく一般的に認知されていた中で日本はやや出遅れ感がありました。しかし日本でも漸く大手企業を中心にさすがに取り組まなければ、と重かった腰を上げ始めている印象です。ただそこで課題になるのが、企業の内部にESGやSDGs、サーキュラーエコノミーを熟知した財務や人事、新規事業開発などのプロフェッショナル人材がいないこと。サステナブルな社会実現に向かう上で壁となるこの人材課題は、今後WarisやサーキュラーHRが貢献できる部分だと考えています。

笠原:転職を望む女性たちと話していても、社会課題の解決につながること、環境に貢献する仕事がしたいという声は多いです。そういった人材が集まって、チームを作ることもできるかもしれませんね。

最後に、河さんが個人として、今後挑戦したいと思っていることがあれば教えてください。

:私は4年前、福岡に移住しました。自然豊かな環境の中に、多様なバックグラウンドや個性を持つ子どもたちが質の高い教育を受けられる学校や、ゲストハウス、ギャラリー、飲食店などもあるアクティブビレッジを作りたいという思いを持っています。

プライベートでも、経営者としても挑戦したいことがたくさんあって、これからチャレンジしたいことについて考えるとワクワクが止まらなくなり、夜眠れなくなることもあるんです(笑)。

笠原:素敵ですね!サーキュラーHRも、来年はさらなる挑戦をしていきたいです。今日はありがとうございました。

 

<サーキュラーHRへのヒント>

  • 女性3人によるリモート共同経営を行っているWarisでは、互いの意見に耳を傾け、尊重する合議制で意思決定をしている。
  • 育児、介護など働く人にはさまざまな要因があり、能力を発揮しやすい環境や時間帯は人によって違う。Warisでは創業当初から、メンバー全員がリモートワークを基本にしている。
  • サーキュラーエコノミーの分野において、日本は欧米よりも遅れている。企業がESG投資に取り組もうとしても、それを担うプロフェッショナルな人材がいないという課題がある。

【プロフィール】

株式会社Waris  代表取締役/共同創業者 河京子

1984年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業後、2007年に株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。法人営業担当として、外資系医療機器メーカーを始めとした医療業界の顧客企業と、個人のマッチングに従事。その後、営業企画部門へ異動。新規事業コンサルタントとして、大型採用を行う法人企業に対し、全体工程設計・運用、人材要件定義、採用コミュニケーションプランの立案などを実施し、事業拡大を人材の観点から支援。リクルートキャリア在籍中の2013年4月、株式会社Warisを設立しボランタリーベースで経営に関わった後、2014年6月にリクルートキャリアを退職し現職。2016年4月より福岡在住。

 

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